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2021年 横浜市長選 候補者の公約などまとめ(投票前検討用)

2021年8月22日の横浜市長選挙は、候補者8名と数が多くそれぞれの公約を確認するだけでも時間がかかるので、こちらに纏めておきます。

私の場合候補者から市長を選択するポイントに置いたのは、

横浜市の不足している財源問題をどう解決するのか。

②公約は財源問題に触れた上で解決策も提示しているか。

③具体的なKPIは設定されているか

の3点です。

 横浜市の抱える課題

横浜市のHPに政策・取り組みというページがあって、ここにまとまっています。
政策・取組 横浜市


横浜市基本構想横浜市中期4か年計画を斜め読みしましたが、いずれも定性的な表現が多く、データとKPIの設定(そもそも数字が設定されてないことが殆ど)が緩々なため、ほんとに効果があるのか分かりにくい印象でした。


市の各数値データは横浜市オープンデータポータルというサイトで公開されているのですが、自分は横浜市の喫緊の課題は、3兆円もの借入金がある故に住民サービス向上の着手が後手になっていることが問題だと考えています。この資料この資料とみると、横浜市の財務的な課題と市へのニーズが記載されているので簡単にまとめると、

  • 横浜市の借入金(令和3年度末見込み)  3兆1,400億円以下
  • 横浜市役所の歳入(令和2年度当初予算) 1兆7,400億円
  • 2018年から2021年の4年間での返済額(差額)   600億円

2020-2021年の4年間の返済額 600億円は、コロナ渦にあってうち2年は返済ペースが下がるのは仕方ないとして、2010-2013年、2014-2017年のように4年間ごとに2,000億円ずつ減らすとして、あと16年弱かかる計算です。

純化して、歳入のうち2,000億円返済に回すとして残り1兆5,400億円で市長・市議会は政策を回していくことになるのですが、後述する課題1.2を鑑みると、なかなかじり貧な財政状況下、横浜市として追加の住民サービスには回せるお金がない状況であることがわかります。
ゆえに代替案のあるものについては市として投資できず、例えば中学校の給食センターの実現や、他にも余計なことをやっている余裕は財政上にありえないため、既存の住民サービスも少しずつ削減して努力しています。例えば高齢者向けの市営交通の無償化をやめる方向で進んでいます。これについては市バスの乗車省利用管理システム業務委託の説明資料にも掲載されていますが、いずれも "まずは借金何とかせんと良い住民サービスが提供できない!"という財務的な背景によるものと推察できます。

 

市の課題認識を前述の資料から抜粋すると次のようになります。

 

1. 生産年齢人口減少による継続的な歳入減

(年貢米じわじわ減ってく)

2.  売却できる市保有用地の枯渇、財政調整基金残高※の減少。資産の切り売りはそろそろ限界に。(ポッケ無い無い)

3.  増大する財政需要への対応(高齢化人口の増加=自然な歳出増、市立学校の老朽化、市営住宅建て替え、ごみ焼却施設の更新など)。既存インフラや住民サービスの可能な限りの維持で予算的に手一杯。(みなデマンディングやなー)


以上を踏まえて、資料では”借入金残高の適切な管理、成果重視の選択と集中をするのだ!”、

と結論づけられていました。

 

 ※財政調整基金は平たくいうと自治体の貯金。
今回のコロナ渦のように休業補償費用などで取り崩して支出するが、横浜市はこれが非常に少なく、全国の市町村で少ない順で上から19番目となっている。

toyokeizai.net

 

となると、市長や市議会がやるべきことは、

1. 市の歳入を増やす施策打ち手を数多く打つこと。これまでのところ成功したのは企業誘致、将来的にはIRくらい。観光施策は残念ながらはあまり効果が出ていない。労働人口の市外転出も未だ多い。

2. 支出を抑制するために市民に不人気な打ち手を実行する。これには住民サービスの削減や、現在人手が掛かっておりデジタル化で省力化や人員コストの削減ができる分野(各種受付、申請、土木のメンテナンスの効率化など)への投資を行う。

3.ただし2.のデジタル化に伴う人員削減(主に市職員のうち事務系が対象になると仮定するが)では、令和2年度の調査によると市職員は約4万4千人おり、うち事務系は30%を占めている。

出典はこちら 横浜市統計書 第20章 選挙、議会及び市職員 横浜市

(上記では市職員数はなぜか8.市議会議員選挙の下に分類されている)

市職員の削減は失職者が増えると市歳入にも多少ならず影響が出る場合があるため、削減した公務員向けには早期退職パッケージの提供や転職あっせんなどの収入が維持できるための施策を打つ必要がある。

 

この3点が柱になってくると考えられます。企業に置き換えると

1. 売上を増やすための商品や分野を増やす

2. 運用コストを削減しつつ、顧客利便性は上げる

3. リストラをした場合は退職手当の積み増しや再雇用の斡旋をする

という感じですね。

 

ちなみに中期4か年計画はその時の市長の公約が盛り込まれるので、公約の実行が市の課題解決の打ち手として妥当か、誰も効果測定をしてないのは問題と感じました。よくIRのことが取り上げられますが、上記課題3.解決のために財源確保が必要な横浜市としては、他に変わる財源案が出てこない以上、今のところ大きく増収するにはこれしか打ち手がないようで、今回の各候補者の公約では財源確保に変わるアイデアは特に出てないのがとても残念に感じました。もしIR反対して財源確保できなったら、その分住民サービスは少しずつ削らざろう得ないんでしょうね。でも公約をみると住民サービス向上のネタばかり並んでいます。

ここまで書いてて、「横浜市に高い住民税払ってるのに住民サービスが悪いって最悪!だから住民サービスが良くなりそうな人に投票しよう」という投票行動も分かるのですが、借金が巨額に膨らむまで若かりし頃市長や市議会議員の投票に行かなかったり、行っても選択をしくじってきた自分を含む中年世代としては、ここでサービスの良さを選ぶと、今の子供達が将来破綻自治体になった故郷横浜を捨ててしまうであろうことにも、想像力を働かせたいところです。夕張市でも脱出できる人たちは殆ど市外へ出てったちゃって、残された高齢者の多くはかなりのご苦労様をされてるようだし。

 

各候補者の公約・政策

前置きが長くなりましたが、いよいよ8人の公約を確認していきます。

今回は候補者が多いため、各候補者のHPの公約が書いてあるページへのリンクと私の寸評(個人の意見です)を貼っておきます。(掲載順は順不同)

 

 

1. 小此木 八郎氏 (無所属・新人)

hachirou.com

寸評:定性的な公約で、市の課題解決に直結するKPI設定をしている印象は受けなかった。市長として市の課題に対して何がしたいのか自分には腹落ちしなかった。衆議院議員としては法律の起案とかやってなかったみたい。ふんわりフワフワ感に溢れてます。元自民党

参考:小此木八郎 - Wikipedia


2. 坪倉 良和氏 (無所属・新人)

www.tsubokura-yoshikazu.com

寸評:良い人そうだが、これもふわっとした公約。食をテコにした施策を打ち出してますが見込まれる効果の数字がなく判断不能財政問題についてはすでに打たれてそうな手を提案しているようで、着任してからギャップに腰抜かすかもと勘繰ってみたり。具体的なKPI設定はしていない。

 

3. 福田 峰之 氏(無所属・新人)

fukudamineyuki.yokohama

寸評:HPと6つの政策の分かりやすさは〇。財務的な課題に対しては言及はないが、noteとか見ると課題認識はしっかりできてた。ただ不足する財源の中で掲げる政策の優先度とどこまで実現できるかが不明。衆議院議員として過去にマイナンバーを導入を推進したなどの実績もあり。
自民党>元希望の党

参考:福田峰之 - Wikipedia

 

4. 山中竹春氏 (無所属・新人)

takeharu-yamanaka.yokohama

寸評:耳障りの良い政策が並ぶ。市の課題解決につながる政策はなく、実施するための予算捻出が議会と折り合えるか現実味が感じられない。コロナ対策を押し出してるが、コロナは国の施策に頼らざろうえなく短期課題なので、それ以外の公約が本丸になるが本当にできるのか疑問。色々噂が出てるのもアレな感じ。
立憲民主党推薦。


参考:
山中竹春 - Wikipedia


5. 林文子氏 (無所属・現職)

hayashifumiko.com

寸評:これはなかなかアチャーな政策でした。HPには”決意”と書いてあるけど、ほんとうに”ふわっと”してます。財政問題にも”決意”の一つとして触れてるけど、どうやって解決するか全く書かれていない。関係ないですがHPでTOPページに行くと変な音楽が流れるので気を付けたいところ。ふんわりフワフワ具合で1.の方と大差なしの印象。

参考:林文子 - Wikipedia

 

6.  松沢成文氏 (無所属・新人)

www.matsuzawa.com

寸評: 耳障り良い系。横浜八策とヨコハマ・ルール7が書いてあるけど、これって市の課題解決につながるんでしたっけと腹落ちせず。ちょっとズレてる印象。でも県知事や議員としては色々お仕事はきちんとされてきたようなので、課題ときちんと向き合えば手を打つ可能性もあるが、これまでの立ち回り方であまり信用できないのが難点。
参考:松沢成文 - Wikipedia


7. 太田 正孝氏 (無所属・新人)

www.ota-masataka.com

寸評: 市議が長いせいか、政策に米軍住宅跡地活用や森、水源の保全などを掲げている。財政問題については市長の給与の半減、市民減税・公共料金の値下げなど耳障りの良い政策を上げているが、借金3兆円あるのに焼石の水ではないかと。あと減税した財源どうやって捻出するかも不明。Wikipediaみるとなかなか男気溢れる人見たいですが、市議時代の立案や実現したことに関する記述がほぼなかった。これまでの実績を知りたいところ。元立憲民主党

参考:太田正孝 (市議会議員) - Wikipedia

 

8.  田中 康夫氏 (無所属・新人)

tanakayasuo.me

 

寸評:12の取り組みを上げてらっしゃいますが、市の課題解決よりは住民サービス向上のなど例によって耳障り良い系な感じでした。出来たらよいものばかりだと思いますが、財源どうすんでしょうか。そのあたりに触れてないので、この政策を全て実行したら借金減りません・逆に増えちゃいました!となりそうで怖い。これは他の耳障り良い系にも当てはまるけど。

参考:田中康夫 - Wikipedia

 

以上、どの候補者も市の財政問題と課題解決につながる政策や公約をズバリと掲げていないことが公開情報から読み取れました。

選挙では市の財政問題は一般に受けない課題なのでどうしても住民サービス向上の耳障り良い系に流れちゃうんですよね。金の事だけ考えると生活はつまらなくなりますが、まずは3兆円の借金を少しでも減らして支出を押さえないと先々財政破綻した夕張市みたいなことになりかねません。

そんな中でも自分だったら財政問題に対する具体的な解決策=施策とKPIを掲げた候補者がいたら迷わず検討するんですが、今回の候補者には要求を全て満たす人がいなかったので、いつものことながら何とも残念な感じを受けました。とはいえ消去法ですが投票先は定めました。


8月22日、果たして誰が当選してもだいたい、あちゃーな未来が見えてますが、まずは投票に行ってこようと思います。